第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(8)
『恋人製作委員会』/白野 ゲール
あらすじ&コメント
図書館司書をしている34歳の最上赤音は、「恋人製作委員会」の一員。「恋人製作委員会」とは、ブログで知り合った恋日照りの5人の女性が、会費を積み立て、最初に恋人ができたひとがお金を全部もらえるという会だ。互いにブログ、ツイッター、オフ会で「イタイ」近況を報告しあい牽制しあっているなか、赤音は、8つ年下のナツキからキスされた。盛り上がった矢先、「恋人制作委員会」を作った女性が失踪。IT企業のイケメン社長とゴールインし、「勝ち組」になったはずの彼女がなぜ?不安が広がるメンバー。赤音もナツキにつれなくされて……「イタイ」アラサー女性が本当の恋を掴むまでを描く。
SNSやツイッターで「キラキラ女子」ぶりをアピールしあうイタイ女性たち、という設定が、今日的で面白いと思います。小さなコミュニティーでムダに牽制しあったり、情報過多になったりして、かえって上手く恋愛できない女性たちという着眼点が秀逸で、「恋人製作委員会」という設定も、やっちゃった感バリバリ、イタクていい。しかし、いかんせん、描写がとにかく全体的に浅く、主人公の女性はじめ登場人物たちに感情移入できないのです。浅はかな人物を描いているから、と思えば、それまでですが、読者に共感を呼ぶには、せめて後半の主人公だけでも、もう少し深みがほしい。